今回はつい最近いった母との温泉旅の記録です。
母は現在、施設で暮らしています。入浴は大勢の入居者さんたちを相手にするから仕方のないことなのですが、湯船にゆっくり浸かる機会はほとんどありません。元気な頃は近所の温泉にほぼ毎日のように通っていた母。「たまには、温泉に入れてあげたい」——そんな思いから、昨年から年に2回、バリアフリーで大浴場のあるホテルを探して連れて行くようになりました。
行き先選びの基準は、施設から行きやすいこと(本庄早稲田駅が起点です)、そしてバリアフリーの施設があること。AIに相談しながらあれこれ検討した結果、今回は越後湯沢温泉に決めました。決め手は「駅からホテルが近い」こと。そして駅ナカが充実しているとは。行ってから知ったのですが、これが大正解でした。

新幹線での移動 〜意外な難関は「あの隙間」〜
本庄早稲田から上越新幹線で越後湯沢へ。母は歩行器を使っているので、移動にはいくつか工夫が要ります。
座席は出入り口に近い席を予約しました。ただ、歩行器が思いのほか大きく、畳んだり、足元のおぼつかない母を席まで誘導したりは、なかなか大変でした。
そして意外な難関が、ホームと電車の隙間。健常者なら何ということもないあの数センチが、母にはかなりのハードルで、抱きかかえて乗り降りする場面もありました。同じ状況の方は、心づもりをしておくといいかもしれません。駅のエレベーターは案内がしっかりしていたので、迷うことはありませんでした。
1日目:へぎそばと麹ソフトと、日本酒の「偵察」
越後湯沢駅に着いたら、まずはお昼。温泉街の老舗「中野屋」さんでへぎそばをいただきました。人気店だけあって、待つこと1時間。それでも母は喜んで食べてくれたので、待った甲斐がありました。布海苔をつなぎに使ったへぎそばは、つるりとしたのどごしで、天ぷらもさくさく。

食後のデザートは、駅ナカ「CoCoLo湯沢」のぽんしゅ館にある「糀らって」へ。私はコーヒーゼリーソフト、母は白玉ぜんざい麹ソフトを注文しました。麹のほのかな風味と優しい甘さに、母も「美味しい」とにこにこ。甘いものは、いくつになっても別腹のようです。

ぽんしゅ館では、相方に頼まれた日本酒購入の「偵察」も抜かりなく実施。新潟全酒蔵の利き酒ができる「利き酒番所」もあり、酒好きにはたまらない空間です(偵察の成果は翌日に持ち越し)。
その後は「雪国館」(湯沢町歴史民俗資料館)へ。事前には「バリアフリーではない」と聞いていたのですが、行ってみるとエレベーターがあり、広くはないものの、ゆったり見ることができました。94歳の職人・小林守雄さんのワラ細工作品展、湯沢町で出土した27万枚もの古銭、映画『雪国』の資料、囲炉裏のある雪国の民家の再現……駒子さんの部屋もあって、入館料以上の満足感でした。
高所恐怖症の母、ロープウェイに乗る
続いて、湯沢高原ロープウェイへ。166人乗りの大型ゴンドラは、人が少なかったこともあり、歩行器のまま乗ることができました。
ただ、母は高所恐怖症。景色は眺めているものの、終始無口です(笑)。でもそんなとこぐらいしか連れていくところがなくて・・・以前伊香保で乗ったロープウェイよりは揺れが少なく、「まだマシ」だったようですが。あいにくの曇り空で眺望は今ひとつでしたが、高原から見下ろす湯沢の町並みやスキー場の風景はなかなかのものでした。高原では、駅ナカで買っておいた名物の笹だんごをおやつに。

ここでひとつ反省点を。チェックインまでの時間潰しも兼ねて色々回ったのですが、大して歩けない母を連れ回しすぎて、少々お疲れ気味にさせてしまいました。私にとっては「どうという距離」でも、母には大変だったようです。元気な頃は歩くのが大好きだった母だけに、この匙加減はなかなか難しいところです。現地到着はもう少し遅めでもよかったな、というのが正直なところ。
湯沢グランドホテル 〜坂は急だが、部屋は快適〜
宿泊は湯沢グランドホテル。駅から近いのが決め手でしたが、ひとつ誤算が。道路から入り口までの道のりが、なかなかの急坂だったのです。歩行器の母にはここが一番の難所だったかもしれません。おそらくホテルに言えば車での送迎は可能だと思うので、次回は迷わずお願いしようと思います。
お部屋は段差のないフラットな造りで、ベッドも低め。特にありがたかったのがトイレで、近づくと電気が自動でつき、蓋の開閉も流すのも全自動。母のような高齢者には、この「自動」が本当に助かります。


さて、この旅の最大の目的、温泉です。大浴場には手すりがあり、浴槽内にも段差(ステップ)があったので何とかなりましたが、足が弱った母には湯船に入るのもひと苦労。それでも湯に浸かった母は「気持ちいい」と喜んでくれて——この一言のために来たのですから、もうそれだけで大満足です。とはいえ次回は、家族風呂(貸切風呂)の予約も検討しようと思いました。
夕食は予算の関係でバイキングを選択。ホテル側が料理を取りに行きやすい席を用意してくれていて、さらにトレイを乗せて運ぶカートがあったので、母はそれを歩行器代わりにして料理を選ぶことができました。本音を言えば上げ膳据え膳が理想ですが、これはこれで良い工夫。にぎり寿司や冷やしおでんが食べやすかったようでお気に入り。ポテトや野菜の串揚げなど「滅多に食べられないから」と揚げ物も楽しみ、スイカやメロンなど季節の果物まで、母の好きなものを中心にしっかり堪能しました。
2日目:爆弾おにぎりと文学碑散歩
2日目はチェックアウト後、駅ナカに荷物を預けてお土産探し。ぽんしゅ館ではばら売りのお菓子(雪国ブラウニーなど)をあれこれ買い込み、母にはその場で温泉饅頭とカステラを。前日の「偵察」の成果で、相方への日本酒も無事確保しました。
そして名物「爆弾おにぎり」。魚沼産コシヒカリを羽釜で炊いて、その場で握ってくれるおにぎりです。母と半分こにして食べました。具は母のリクエストで梅。お米が美味しくて、とても優しい味でした。この旅、食べてばかりだったので、これが実質のお昼ご飯です(笑)。

腹ごなしに、川端康成『雪国』の文学碑まで散歩。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」——あの有名な一節が刻まれた石碑が、山々を背に立っています。道中、温泉通り沿いの軒下にはツバメの巣がいくつも。「街中では見なくなったから珍しいね」と母と話しました。こういう何気ない会話が、あとになって一番心に残るものです。

最後は駅ナカのand tap CAFEでひと休み。私は日本酒レモンサワー(酒どころ湯沢に敬意を表して)、母は紅茶で、旅を締めくくりました。
おわりに 〜温泉に入れたら満点!〜
今回の旅の教訓をまとめると、こんなところでしょうか。
現地到着は焦らず遅めに。ホテルへの急坂は送迎をお願いする。次は家族風呂の予約も検討。そして何より——連れ回しすぎない。
同じように「高齢の親と温泉に行きたい」と考えている方に、ひとつだけお伝えするなら。**無理はせず、「温泉に入れたら満点!」ということにした方がいいと思います。** アクティビティは本人の興味の範囲内で、ほどほどに。
母が一番嬉しそうだったのは、甘いものを食べているときと、温泉に浸かっているとき。結局のところ、旅の目的はそれで十分なのだと思います。でもね。連れて行ってるわたしも楽しみたい。そのぎりぎりをどう探ろうか(笑)
次はどこの温泉に連れて行こうかな。
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